理事長メッセージ

2018年度東京大会開催に当たって

 

日本地方政治学会・日本地域政治学会

理事長 浅野 善治 

 

昨年の武蔵野大学での研究会から1年、国内では森友、加計学園問題、さらには公文書の管理にまで問題が及び、安倍内閣の対応・責任について野党が厳しく追及し、長期にわたる審議拒否という異常事態を引き起こした。

日本を取り巻く周辺地域では。北朝鮮が核実験、ミサイル発射を頻繁に行い、アメリカと激しい対立を生じさせ、北朝鮮の核保有に向けた行動は世界的な非難の的となった。国連において制裁決議がなされ、実行に移された。アメリカは軍事的行動は極めて可能性の高い選択肢だとし、軍事的緊張が現実的な問題となっていた。しかし、平壌オリンピックを契機として北朝鮮の態度が急変し、朝鮮半島に南北融和の動きが生じ、南北首脳会談、中朝首脳会談、米朝首脳会談など新たな展開を生じさせている。

こうした様々な状況を見て、「政治における信義」ということが頭に浮かぶ。

法の原則として「信義誠実の原則」がある。お互いに相手方の信頼を裏切らないよう行動すべきとする原則であり、民法12項には「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行使されなければならない。」と規定されているし、フランスの民法では「合意は誠実に履行せらるべきものとす」とも規定されている。

政治の様々な局面で、関係者が相手方を新羅氏、信義に従い誠実に問題を対処したとすれば、また、お互いの合意を誠実に履行することが約束されているとすれば、状況は全く異なるものとなっているであろう。しかし、現実は信義誠実すら、駆け引きの一材料とされるような事態も目の当たりにする。何が信義誠実なのかについても、関係者間に共通の認識があるわけでもない。

しかし、「政治における信義」はもっと意識されなければならないし、我々研究者も、一人一人が地道に信義に従い誠実に研究に取り組むことが求められているのではないかと思う。

本年度も、こうして研究大会を開催できることは、まさに会員各位及び関係者の信義に従った誠実な取り組みの成果であり、皆様に深く謝意を表したい。

本大会は、内容においても「スポーツ・健康と政策」、「地方選挙の実態」、「国際交流セッション(台湾)」、「地方政治をめぐる争点」、「地方紙と政治」に加えオンブズマン研究の第一人者である川野秀之先生、民主党政権における内閣官房長官当内閣の要職を務められた仙谷由人先生の特別講演、さらに「若手研究者セッション」と充実した内容のご講演、ご報告をいただき、関係諸課題につき会員等が熱心に討議・検討し、研究成果を発信していくことを予定している。多くの方々の来場を賜り、意義深い議論が交わされることを強く期待したい。

本学会も、今後なお一層の信義に従い誠実に活動を行い、会員間の相互の協力の促進、会員の研究成果の発信に努めていきたい。会員各位のさらなるご協力とご支援をお願いしたい。

 

 

20185月吉日

地方行政から 地方自治を経て 地方政治の確立へ

日本地方政治学会の設立にあたって

 

 21世紀は「地方の時代」であるとしばしばいわれる。この地方には、二つの意味がある。第一には、「国に対する地方」であり、第二には「都市に対する地方」である。本学会は、この二つの「地方」の結節点を目指して設立されるものである。第一の「国に対する地方」の文脈においては、これまでは「地方分権」という用語が、そして近年では「地域主権」という用語も使用されるようになってきた。また、第二の「都市に対する地方」の文脈では、近年では、地域間の格差の問題がクローズアップされてきたことも記憶に新しい。

 しばしば、「地方の時代」というこの表現は、上記の二つのレベルの「地方」のエンパワーメントにまつわる権限委譲をその方向とするといってよい。

 しかしながら、将来の地方像は、単なる行政権限の委譲だけを要件とするものではないのではない。1949年5月のシャウプ勧告以来、日本の地方は「3割自治」といわれるように、自律的な主体としてはとらえられてこなかった。財源の裏付けも、行政的な権限もないので、そこにおいてはおのずと「地方」の地域の将来のグランドデザインへの自律的な提案もなされず、国任せといった状況があった。そこで、住民が自らの地域の将来をどう選択するかという政治的な選択は存在しないのが通例であった。しかしながら1980年代の後半に端を発し、90年代に活発な議論が展開された地方制度の改革の議論を通じ、1995年から2001年までの第一次分権改革、2002年から6年にかけての三位一体の改革を経る中で、国と地方の関係は見直されることとなった。トップダウン的な「地方分権」とボトムアップ的な「地域主権」、この二つのものが、お互いに補い合った行政のあり方が、地域住民による政治的選択の確立を要請しているのではないだろうか。すなわち、これは将来における自律的な「地方政治」の確立を像として示している。

 政界再編の始期である連立を軸とする93年体制の形成以来、地方政治は自律し始めている。旧来の地方行政や地方自治ではなく、「国政に対する地方」として、「都市に対する地方」として、自律の度合いを高めている。さらに地方の政治的な実践の中でも、地方議会においてマニフェストを掲げる会派や、マニフェストに基づく選挙を行う首長が出現し、その動きを後押ししてきている。こうして国政よりも地方は、より住民に近い目線の中で、これまでの地方行政論、地方自治論の問題対象であったかつての地方のあり方であった単なる「執行の対象」から、住民と協働しながら政策を決定していく地方政治論というあらたな「政治の対象」へと変貌を遂げつつあるのではないだろうか。

 本学会では、そうした問題意識を共有する住民の代表(国会議員、地方議員)、研究者、行政職、事務職、市民、そして報道関係者といった、二つのレベルの「地方」に関心をもつものによって構成され、新たな将来の地方政治像を検討する共通の場を提供することを目的とし、ここに設立するものである。

 

平成23年11月吉日

 

日本地方政治学会・日本地域政治学会理事長

法政大学大学院政策科学研究所所長・教授

 

白鳥 浩